クリーンズファミリー

開発秘話

開発に至るきっかけ

当時事務所に置いてあった長尺トイレットペーパーの段ボールケースにお客様が座った事から始まりました。
多人数で弊社に訪問に来られた取引先のお客様用の椅子が足らなく、その中の一人が段ボールに座ってました。
そこから段ボール製の簡易トイレの開発に着手するのですが、当時でもかなりの段ボール製簡易トイレが販売されていました。

弊社は再生紙のリサイクルメーカーですので、
「無駄なくそしてゴミが極力出ないようなコンセプト」で段ボール製簡易トイレの開発を進めました。
当時は長尺トイレットペーパーが24ロール入っていて、その外箱が簡易トイレに変形するタイプでした。

展示会での厳しい反応

展示会での反応を見るべく、サンプルを試作し出展しましたが、
「これは良い。」といったような声は一度もありませんでした。
「強度はほんとに大丈夫なのか？」
「これは実際女性・子供でも組み立てれるのか？」
「外箱が簡易トイレにするのは商品としてどうなの？」
ある商社は、
「これは売れんと思うね。」

これは売れんという声が一番心に堪えました。
そんな中でも、阪神淡路大地震を経験された自主防のリーダーさんが、価格だけを聞いてくれました。
ほんとそれだけでした。
なんか嬉しかった。

会社に持ち帰り、反省をしながらお客様（実際に発災後に使う人たち）の声を集めていこうとその後の展示会は、情報収集に専念し少しずつ製品を改良していくこととなります。

製品の改良に邁進、そして初受注

「東日本大震災のような大きな揺れが来ると、一つにトイレ関係がまとまってるといいよね。」
「一箱で、すぐにトイレとして使用できれば色々、買い揃える手間も省けるしね。」
一箱の中に、トイレに必要な汚物処理袋・汚物保管袋・凝固剤・トイレットペーパーを同梱し製品改良して、さあ次の展示会で売りに出るぞっ、まさにその時に以前展示会でお会いした自主防災組織リーダーの方から一本の電話がかかってきました。

既に数カ月経っていましたが、
「うちの自治会に簡易トイレを持って来てくれますか？」
と少し製品の説明をして欲しいとの事でした。

準備をし、自治会の集会所に迎い数名のスタッフと、商品説明をさせて頂きました。
帰り際に缶コーヒーを頂き、それをリーダーさんと飲みながら話してくれた言葉が今でも忘れません。
そしてあの缶コーヒーがどの有名なコーヒーショップのよりも、すごくおいしく感じたことも覚えています。

素晴らしいリーダーと、購入を決断された思い

「あんたんとこの簡易トイレ買うよ。いっぱい買うから少し安くしてね。」
「見ての通り、ここには10棟ほどの集合団地なんだが、ほとんどが高齢者で足が不自由な方が多いんだ。阪神淡路大地震時は大変だったよ。住まれている高齢者たちがね。だって炊き出しもここ広場にある集会所まで階段を下りてこないといけないし、仮設トイレだってこの近くに出来てたから、食事のたび・トイレのたびに降りてこなくちゃならない。」
「自分はリーダーとしてほんとに反省してるし、失格だと思う。体がしんどくなった高齢者はおそらく、トイレに行く事が辛くなって、水や食料をあまり取らなくなっていたんだと……」
「せっかく、皆無事で生き残ったのに数名の高齢者が自宅で亡くなってしまった。これほど辛く残念なことは無いよ。」
「だからこの簡易トイレを買うんだ。足の不自由な方の部屋全部に水と簡易トイレを置くんだ。だから、安くしてね。」
私は即答で「もちろんです。」
と答えました。

クリーンズファミリーの開発を終えて

会社は、皆が使いやすく、あって良かったと思われる製品を目指して製造しています。
さらにいろんなメーカーから段ボール製簡易トイレが出ていて、どれも素晴らしい製品ばかりです。
その製品群の中にクリーンズファミリー簡易トイレ付トイレセットはラインナップされました。
自主防災組織のリーダー様のような、心の通う製品に一つ近づけたような気がします。

有限会社丸英製紙　濵田